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『マルドゥック・スクランブル』日本SF大賞受賞記念、ということで昨年末に購入したものの、なぜか手につかず放っておいたもの。ようやく読みました。
冲方 丁著 徳間書店 (2002.4) ISBN : 419905104X 価格 : ?530 通常2-3日以内に発送します。 ■あらすじ 超次元的能力を持つ“感応者”がもたらした災厄から17年後の世界。三百億個の微細な立方体に“混断゛されつつ生き続ける被害者。感応者と普通人の軋轢がもたらしたテロ事件に、感応者である美少女ラファエルと敏腕捜査官パットが挑む。 ■感想 セフィロト、黒き月、災厄の年に生まれた選ばれし子供・・・・・・というあたりに、“エヴァ”とだぶることしばし。もっとも、ストーリーもキャラクター像も共通するところは無し。どちらかというと、『マルドゥック・スクランブル』のヒロイン・バロットと敵役ボイルドがタッグを組んだという感じの物語でした。ただし、陰影の濃いバロットとプリンセスである本作品のヒロイン・ラファエルは、ちょうどネガとポジのような関係かもしれません。また、本作品のタフ・ガイ役パットは、ボイルドに比べるとハードボイルドっぽさでは若干見劣り。その点では、作中1回しか「喋らない」(鳴かない)スーパードッグ・ヘミングウェイに負けてしまいます。 また、ヘミングウェイがいい味を出している本作品を読んで思ったのですが、冲方丁はイヌ好きなのかもしれません。少なくとも、ネズミが主要キャラを努める『マルドゥック・スクランブル』のことを考えあわせると、ネコ好きということはないでしょうね。ネコ好きで知られる神林長平作品では、ネズミやイヌはひどい扱いですし(イヌはそもそも出てこないか)。 ラファエルについては、背景により大きな物語を持っているような印象があり、本作品自体はプロローグ的な位置付けに感じられました。そういう意味で、ストーリーの広がりには少々不満有り。一方、感応者が扱う超能力や捜査官パットが扱う超技術の描写・ネーミングなどについては、冲方丁独特の凝り性なところがキッチリ出ています。かなり淡白な決着の付け方とは言え、発端となる事件自体は解決してストーリーはきちんと収束しますし、冲方丁の様式美を楽しむべき作品ということなのかもしれません。 PR |
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