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ゴールデン・エイジ 1
ジョン・C.ライト著 / 日暮 雅通訳
早川書房 (2006.10)
ISBN : 4150115850
価格 : ¥1,050
通常24時間以内に発送します。


■感想

この作品、おもしろくて楽しめたんだけど、ややこしい話なんで何をどう書くか……と悩んでいたら、“アルファ・ラルファ大通りの脇道”のTakeman氏がスッキリ見事なインプレッション記事を書かれておりました。

- アルファ・ラルファ大通りの脇道:ゴールデン・エイジ 1 幻覚のラビリンス

物語については、こちらの記事を読んでいただくとして、私は登場するガジェット面についてなぞ。




この作品、物語の舞台が、月の軌道を変え、木星に点火するという遠未来なので、登場するガジェットやテクノロジーもかなり凝っています。

天体・宇宙関係の巨大テクノロジーの対極的に重要な役割を担っているのは、脳の拡張・強化技術。“通常の人類は大まかに四つのタイプいずれかの脳強化を受けおり、タイプごとに独特の思考形態を持つ”というような設定になっております。こういう設定は、異種族を持ち出すことによって、個々の登場人物のキャラクター像の深彫り無しに視点にバリエーションを持たせる、というSFならではのやり口とは思うのですが、次に述べる強化現実技術との組み合わせで、結構効果的に使われているように思いました。

強化現実すなわちオーギュメンテッド・リアリティというのは、現状の簡単な例では、人間の眼に映る現実の光景にコンピュータが生成した画像を被せて見せるというもの。プラントや航空機のメンテナンスを行う作業員にディスプレイ機能付きの眼鏡を被らせ、配管や部品を見るとそこにマニュアルやら説明データやらが重なって表示される、という例をみたことがあります。

仮想現実、ヴァーチャル・リアリティという奴と似たところのある技術なわけで、この作品でも、オーギュメンテッド・リアリティもヴァーチャル・リアリティもほとんど区別無し。なにせ、人間の本当の体は安全なところで眠らせたまま、意識だけがネットから現実のロボット・ボディの中まで自由に飛び回り、しかも五感に映る光景はほとんど全て生成されたものか加工された状態が普通、という社会。現実の光景も、自分の趣味で景色に味付けすることから、実用的な情報を重ね合わせて引き出したり、果ては(脳強化のタイプに合わせて)効率のよい解釈が容易になるよう変容させたりということで、どんどん変化していきます。

このあたり、読んでいて思い出したのは、士朗正宗の『攻殻機動隊2』。この作品でもヒロイン“荒巻素子”がネットの中を飛び回ったり、デコット(遠隔操作義体)を操作したりということが縦横無尽に行われ、しかも、その見た目ほとんど全てにコンピュータのデータが重ねられた描写になっていました。『ゴールデン・エイジ』の世界は、この『攻殻2」の描写を押し進めたもの、という印象。

攻殻機動隊 2
士郎 正宗著
講談社 (2002.6)
通常24時間以内に発送します。


一方、個人レベルの知覚に関わるサポートから巨大エンジニアリングまで、『ゴールデン・エイジ』の世界の個人も社会も完全に依存しているのが、“ソフォテク”と名付けられた人工知能群。理想化された人工知能というのはどんな作品でも似たようなものだという印象をうけましたが、主人公と対話する際に見せる姿がちょっと楽しい。主人公と関わりを持ついくつかの人工知能が、単純な立方体から麗しの女神様、果ては飛行機雲を引いて飛んでくるペンギンといった、それぞれの個性と登場場面に合わせた姿で登場し、飽きさせません。この人工知能群、第1巻では主人公を含めた人類を支える黒子役に徹しています。しかし、独自の立場とポリシーを持っているらしく、今後ストーリーの中でどういう役割を果たしていくのかが楽しみなところ。

さて、この『ゴールデン・エイジ』、アイデア・ガジェットを山のように盛り込んだ世界の中を主人公が周囲をかえりみず突っ走るという点で、“ワイド・スクリーン・バロック”的なんですが、第1巻までのところ主人公が流される場面が多くてちょっと物足りない。続巻では、さらにつぎ込まれたアイデアと、周囲の登場人物が途方にくれる勢いで暴走する主人公に期待したいものです。
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