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ミステリーはほとんど読まないのですが、なぜか、この笠井潔<矢吹駆>シリーズと北村薫<円紫さんと私>シリーズだけは全部読んでおります。とは言っても、文庫・ノヴェルズにならないと読まないのですが。
笠井 潔著 光文社 (2006.10) ISBN : 4334076416 価格 : ¥1,680 通常24時間以内に発送します。 ■あらすじ 奇病に感染して入院中の友人を見舞ったナディア・モガールは、ギリシャにいる共同研究者へ資料を手渡して欲しいとの依頼を受ける。首尾よくカケルの同行を取り付け、ナディアは、共同研究者が滞在しているというクレタ島沖合いの孤島・牛首島へと向かった。 ミノタウロス島とも呼ばれるこの孤島には、アメリカ人の富豪がミノア文明式宮殿(つまりミノタウロスの迷宮があったというクノッソス宮殿)を模して建てた豪邸ダイダロス館があるばかり。 ナディアとカケルを含め10人となったダイダロス館の訪問客たちは、定式どおり、嵐によって牛首島に孤立する。そして、一人また一人と謎の死を遂げる訪問客たち。ギリシャ神話を仄めかすかのように装飾された死体を前に、ナディアは何を目撃し、カケルは何を語るのか・・・・・・ ■感想 シリーズ第5作ともなると、シリーズならではの「お約束」が確立していて当然なんでしょうが、本作でもその点の期待は裏切られません。 まずプロローグからして、ナディアとアントワーヌの旧友である医学者が奇病の研究のためアフリカ奥地に赴くと、そこにチラつくのは“あの”ニコライ・イリイチの影、というシリーズのファンには堪えられない導入。 ストーリーが進み始めてからのお楽しみも同様で、ギリシャ神話に関する豊富な薀蓄あり、カケルが語る哲学談義あり。私自身には、カケルによる「人が人を殺すのは許されるのか」という分析が興味深かったです。このシリーズの中心に関わる議論だと思うのですが、前半のパリでのナディアとの対話シーンでチラリと語られるだけで結論がぼかされているのが、また気がもめるところ。 一方、マンネリとまでは行かないものの、シリーズ作品ならではのパターン化の弊害も多少あるような。これまでのシリーズのパターンから言って、コイツがアレだろうという登場人物がやっぱりアレだった、というのはミステリーとしてはどうなんでしょうか。もっとも、謎の全てはラストに至るまで解き明かされないので、読み進む上では気にならないですが。 その他、蘊蓄多すぎとか、要素がバラバラとか、ネットでもいろいろな評が出てますが、確かに、前作『哲学者の密室』と比べると発散していてタイトさに欠ける印象はありました。いずれにせよ、シリーズを通して読んでいるファンには、たまらない一册であることには間違いなし。 ■関連リンク - 文藝春秋 本の話より“ロング対談 新世紀本格の最前線 笠井潔×歌野晶午” 今度の『オイディプス症候群』もそうで、犯人の計画が崩れることによって生じる謎というものを、自分でははっきりと意識しないままに書き続けてきたような気がします。 <飛鳥井シリーズ>『魔』の出版に際して行われた対談のようだが、『オイディプス症候群』はじめ<矢吹駆>シリーズについても言及あり。 PR |
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