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経営論やナレッジマネージメント関係で知った野中郁次郎氏が、アメリカの軍隊組織について、どう書いているのか気になって読んでみた。

アメリカ海兵隊
野中 郁次郎著
中央公論新社 (2000.5)
ISBN : 4121012720
価格 : ¥756
通常2-3日以内に発送します。

■内容&感想

本書では冒頭から全体の8割程度を費やして、誕生からベトナム戦争以後の時代までのアメリカ海兵隊の移り変わりを描いている。海兵隊の歴史の記述にこれだけの量を費やしてはいても、もちろん、戦闘の描写や兵器・装備の細かな説明など、軍事物・戦記物的な記述に頁を割いているわけではない。

アメリカ海兵隊は、創設以来何度か、存在意義を疑われる存続の危機に直面している。そして、その都度、危機に対応して、あるいは危機に先立つ形で、組織のミッションとそれを反映した組織の具体的あり方を自ら変革してきたのである。その経緯を具体的に示すのに、それだけの紙数が必要だったというわけ。



本書では、アメリカ海兵隊の歴史を下記の5章に分けて説明している。

第1章:存在の危機
独立戦争時に曖昧な目的で設立された海兵隊が、前進基地防御という一定の役割を見いだすまで。

第2章:新たな使命の創造
自律的なイノベーションの結果として、「水陸両用戦」というコンセプトが組織ミッションとして見いだされるまで。

第3章:教義の実践、第4章:教義の革新
実際の軍事活動の中で、「水陸両用戦」の概念が実践に移され、その具体論が完成するまで。軍事史的には、ガダルカナル島上陸からタラワ島・硫黄島などの戦闘、沖縄上陸までの太平洋戦争期間に対応する。

第5章:革新への挑戦
第二次大戦後の軍縮期後の朝鮮戦争、さらに、新たな組織的対応を迫られたベトナム戦争を経て、現在の姿に至るまで。

これらの海兵隊の歴史を記述するにあたって、著者は、「アメリカ海兵隊の軍隊的精強さに見習うべき」であるとか、逆に「暴虐な戦闘マシーンとして忌むべきものである」といったような観点での言及はいっさい行っていない。客観的な視点から組織としてのアメリカ海兵隊のあり方を調査した結果を淡々と示し、その結論として、市場競争的な淘汰圧無しの状態でも組織の自己変革を可能としている体質をこそ優れたものとして取り上げている。

その結論が述べられているのが、最後の「第6章:組織論的考察」。この章で、著者・野中氏は、アメリカ海兵隊を“自己革新組織”として位置づけ、自己革新組織に必要と考えられる6つの要件それぞれについて、海兵隊の特徴を分析している。

ここまで読むと、なるほどアメリカ海兵隊というのは大した代物だと思わされる。一方で、やはり軍隊(しかもアメリカの)であるからこその特殊性がかなり影響しているんじゃないの?と感じるのは、凡庸な組織の中で悩む凡人のやっかみか。ただ、競争原理万歳的な昨今の世の中、競争がなくとも自己革新組織は確立可能という認識は重要に思えるので、公的セクターの他分野における自己革新組織の事例を知りたくなった。

……などと、しかつめらしいことばかりではなく、海兵隊という組織の歴史が極めてわかりやすく書かれているので、ヲの字的興味もしっかり満たされます。佐藤大輔の作品の軍制論的なウンチクが好きな人なら、かなり楽しめるのではないかと。
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