メディヘン3から4への記事移行用なので3.5
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キム・スタンリー・ロビンスンの『南極大陸』では、南極探検黄金時代、すなわち20世紀初頭の南極点初到達が競われていた頃の南極探検の逸話が、いくつも紹介されている。『南極大陸』自体、南極圏での遭難とサバイバルがテーマの一つになっているし、また、淡々とした成功より華々しい悲劇の方が映えるということもあってか、そこで紹介されている逸話も、遭難の苦闘にまつわるものが多かった気がする。シャクルトン率いるエンデュアランス号の遭難もその一つ。
一方、最近、ビジネス関係の記事でも、ちらほらシャクルトンの名前を見かける。やはり、今の時代、大きな危難に負けなかったシャクルトンにあやかる必要があると言うことか。 そんなことから、シャクルトン探検隊の話については興味があったのだが、ちょうどそのテーマの本3冊を見つけたので、読んでみることにした。この記事は、その第1弾。 エンデュアランス号漂流 posted with 簡単リンクくん at 2006. 9.11 アルフレッド・ランシング〔著〕 / 山本 光伸訳 新潮社 (2001.7) ISBN : 4102222219 価格 : ¥820 通常2-3日以内に発送します。 ■紹介&感想 エンデュアランス号に乗って南極を目指したシャクルトンと探検隊員たち。彼らのの遭難と生還の物語は、どれくらい知られているものなのだろうか。彼らの苦闘の物語は、大まかには次のような流れとなっている。 1) エンデュアランス号が南極大陸沿岸で流氷に閉じ込められる 2) 流氷に閉じ込められたまま漂流するエンデュアランス号内で南極の冬を越冬。 3) 流氷によりエンデュアランス号が破棄され、その後、流氷原上でキャンプしながら漂流。 4) ボート3隻で流氷原から脱出し、パーマー半島先端のエレファント島まで、氷山の浮かぶ海を航海。 5) 救助を求めてシャクルトンら数名がボート1隻でエレファント島を出帆、サウス・ジョージア島まで1,000キロの単独航海。 6) サウス・ジョージア島を初横断して捕鯨基地へ到達。 7) 氷に閉ざされたエレファント島に残る仲間達を救出。 とにかく、一難去って、また一難の連続。特に最後のシャクルトン達の航海は、世界で最も荒い海を小舟一艘で渡ってホッしたと思ったら、ボートが着いたのが人の住んでいるのと反対の岸。装備も無しに人跡未踏の氷河と高峰を越えていかないとならない、という壮絶さ。全員生還という結末を知りつつ読んでいてすらイヤになってしまうような難局の嵐で、もうカンベンしてやってよと言いたくなってしまった。遭難事故を指して偉いというのも妙だが、まさに、偉業としか言いようがない話。 この苦難の物語の全体像を知るためには、『エンデュランス号漂流』は最適。遭難事故のあった1915年から40年後の1955年に出版された本だが、アメリカ人ジャーナリストのアルフレッド・ランシングが、シャクルトン始め探検隊員達の日記や当事者達への聞き取りなど広範な取材を行ったとのことで、エンデュアランス号の航海の顛末を客観的かつ読みやすい文章でとりまとめている。 さて、とにかく全員生還というのがこの話のすごいところで、ビジネス関係でとりあげられる際には、どんな難局にあっても探検隊員達をあきらめさせなかったシャクルトンのリーダーシップに着目されることが多い。本書でも、その点については十分とりあげられていて、トラブルメーカー的な隊員を常に眼の届くところに置くなどといった、シャクルトンの気配りをよく読み取ることができる。また、シャクルトンがエレファント島に残った副隊長ワイルドに残したメモ等が収録されているが、こうした記録を読むと、シャクルトン自身、リーダーとして信奉されるに相応しい高潔な人物だったらしいことが、感じとれるのだった。 また、本書は、関係者に対する幅広い取材がベースとなっているせいか、局面ごとの探検隊全体の雰囲気を感じとれて、次の記事でとりあげるシャクルトン自身の記録『エンデュアランス号漂流記』と比べても魅力的な部分になっている。 特におもしろいのは隊員集めの部分。本書によると、隊員の採用は、シャクルトンがほとんど直感で決めていたのこと。その結果、類は友を呼ぶ式で人材が集まったのか、とにかく状況が悪くなっても皆メゲず、隊員のモチベーションが極めて高かったらしいのが不思議。モチベーションが高すぎる人たちが集まったあげく、引きどころを失って遭難ということにもなり、またその状況から生還することもできた、ということかも。やはり、物事を決めるのはチーム編成、ということか。 ■関係リンク - 「旧師によって擦り込まれた私の南極人生」村山雅美(社団法人日本山岳会 -会報「山」より-) 日本の第9次南極越冬隊隊長・村山雅美氏の英語の先生がシャクルトン探検隊員オードリーズ氏だった……ということから、村山氏がオードリーズ氏との想い出を書かれたエッセイ。 ■他のシャクルトン本の紹介と感想 - アーネスト・シャクルトン『エンデュアランス号漂流記』の紹介と感想 - エリザベス・コーディー・キメル『エンデュアランス号大漂流』の紹介と感想 PR |
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