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会社帰りの古本屋漁りでゲットしたもの。
「古本屋漁り」といっても、いっつも特定の一軒、しかも値段のつけ方が固定的な店にしか行かないので、よくある古本屋巡り話の「こんなイイものがこんなに安かったのです」というような狩猟的なお楽しみはほとんどない。 いつものルートを巡回して、自分の好みの本が入っているかどうか見て回る、というそれだけ。なんというか、いつもの場所においしそうなキノコが生えているかどうか見て回る、といった採集文化っぽい受動的やり方。それでも、なんとなくピンとくる本がみつかると、結構ハッピーになれるのであった。 二つの大聖堂のある町 posted with 簡単リンクくん at 2006. 8.21 高橋 哲雄著 筑摩書房 (1992.12) ISBN : 4480080317 価格 : ¥836 この本は現在お取り扱いできません。 経済学者である高橋哲雄氏が、英国滞在経験などを活かして現代イギリスの社会と文化についてつづったエッセイ集。 本書の解説によれば、こうした学者さんが市井の話題について書いた随想、随筆のことを“学芸随筆”というらしい。学問を通じた深い教養と、随筆・エッセイを書くのに必要な遊び心をあわせ持った学者さんによる文章は、一粒で二度おいしい、ということのようだ。本書の解説(向井敏氏)では、丸谷才一氏の文章も引いて学芸随筆の魅力に触れているが、もちろん、それは本書の魅力を物語るためでこそ。 本書では、文学や、料理、音楽、パブ、公園、ちょっと古いが「英国病」など、イギリスを話題にしようと思えば、すぐに思いつくような親しみのあるトピックが取り上げられている。本書の特徴的な点は、そうしたトピックを英国内あるいは英国史の視点から見ることによって、英国人にとっての意味あいを説明してくれる点。このため、単に英国文化の独特な点の紹介にとどまらず、なぜそうした独自性が産まれたのかというところまで触れられることになる。しかも筆者自身の体験が随所に散りばめられており、そうした部分は品の良い紀行文風で、全体が柔らかい雰囲気になっている。 例えば、本書冒頭では、英国の特産品の一つとして「探偵小説」を取り上げているが、この分野の小説は巷間イメージされるように文化の大衆化により発達したのではなく、中産階級の上流化による余暇拡大にともなって発達したという説が述べられている。しかも、こうした論説の要所に、アガサ・クリスティが失踪後発見された高級保養地であるハロゲイトの町の訪問記が埋め込まれていて、固くなりがちな文章の内容を和らげている。 自分自身で一番興味深く読んだのは、本のタイトルにもなっている「二つの大聖堂がある町」の章。これは、英国教会とカソリックの二つの大聖堂を持つリヴァプールについてのエッセイ。過去に港町として栄え、アイルランドとの行き来の主玄関でもあったというリヴァプールの多面性と、そこからくる複雑な魅力がよくうかがえる文章で、この文をベースにふくらませて書かれたという『アイルランド歴史紀行』も読みたくなってしまった。 PR |
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