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以前、どちらかのblogのレビューを読んで購入したまま、ずっと放っておいたもの。夏休みの旅行でラスベガスへ行くことになったので、機内読書用に堀り出して読んでみることにした。
ハンター・S・トンプソン著 / 山形 浩生訳 ロッキング・オン (1999.10) ISBN : 4947599723 価格 : ?2,070 この本は現在お取り扱いできません。 著者のトンプソンは、ゴンゾージャーナリズムの先駆者として知られる。ゴンゾージャーナリズムというのは、反体制文化を底辺に置きつつ、自己の体験と主観を綴ったルポルタージュの一形式、ということかと。書く人によっては、むちゃくちゃカッコ良くて、事実関係なんかどうでもいい、となりそうなスタイルだな。トンプソンは、“ヘルス・エンジェルス”の実態やら'72年ニクソン再選時の大統領選ルポとかをこの形式で書いて有名になった、ということだが、現在は、ジョニー・デップ主演/テリー・ギリアム監督の『ラスベガスをやっつけろ』の原作者と言ったほうが通りがいいのかも。
本書『ラスベガス★71』は、その『ラスベガスをやっつけろ』の原作本で、とあるジャーナリストと弁護士のラスベガスへのイベント取材旅行の模様を描いた紀行文学。というと真っ当そうだが、ドラッグてんこ盛り(本人にも車にも)状態のまま、真っ赤や真っ白なコンバーチブルでラスベガス中をぶっ飛ばし、ホテルの部屋で乱暴狼藉の限りを尽くしたり、というもの。 この本は'89年に筑摩書房から一度翻訳が出ているが、'99年に映画公開に合わせて、山形浩生訳でロッキング・オン社から再刊されたのが本書。筑摩刊→ロッキング・オン+山形浩生という変化は、反体制文化やらジャーナリズムやらへの世の中の見方の変化を表しているようでおもしろい。ちなみに、訳者の山形浩生氏のWebサイトを見ると『ラスベガスびくびくゲロゲロ紀行』という邦題にしたかったようだ。山形氏のサイトには、刊行時に25%カットされたという訳者あとがきの完全版も掲載。トンプソンやゴンゾージャーナリズムについては、この訳者あとがきに詳述されている。 山形氏が「勢いだけで書かれた原書を勢いだけで訳した」という文章は、エラくノリがいい。ラルフ・ステッドマンの挿絵イラストもグロかわいくて素敵。しかし、文章のノリのよさも登場人物達の無茶苦茶さも、'60年代反体制文化への弔鐘の一つかと思うと物悲しいところがあって、夏休み移民船団の一室と化したジャンボのエコノミー席で読むには合わなかったかも。却って、冬の夜中に一人きりでウィスキーでも舐めつつ、砂漠の空気の暑さを想像しながら読んだりする方が合うのかもしれない。 PR |
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